一章

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お経を読み上げるお坊さんの声を邪魔するように外は雨が激しく音を立てて降っていた。 俺が小学校三年の春に母は脳梗塞で倒れて亡くなった。まだ俺が幼かった事もあるがあの時の事は断片的にしか覚えていない。 父は目にいっぱいの涙を溜め沢山の人に頭を深々と下げて挨拶をしていた。 その時、父方の祖母がギュット俺の手を握り締めていた事はしっかりと覚えている。 母が亡くなって父は酷いショックを受け、身の回りの事さえも手につかなくなり痩せこけてしまい見兼ねた祖母が俺をあずかり暫く俺は祖母の家に泊まっていた。
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