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部下の話によると、今朝から小十郎が台所に引きこもっているという。
何やら大変珍しい食材を手に入れたらしく、それの調理に悪戦苦闘しているそうなのだ。なるほど、どうりで中から甘い香りが漂っている。
だが、その甘い香りに覚えが政宗にはあった。
甘い香り…?そういえば今日は、
ふとあることを思い出し、政宗は台所に入った。
そこには小十郎が何やら茶色の固形物を丸めて作っている姿があった。
「朝から熱心だな」
政宗が後ろから声をかけると、それに気づいた小十郎は一旦作業の手を休めた。
「ああ、政宗様。先日長宗我部から『ちょこれーと』を手に入れましたので」
「元親から?あの異国の宣教師からじゃないのか」
「奴に頼むと絶対変な物を仕込まれます故」
確かにあの南蛮人がただ普通のものを送ってくれるとは到底考えにくい。なるほどと苦笑しながらも納得した政宗は小十郎の手元に目をやる。手元には異国の文を和訳に直した書物と、丸めたチョコレートにさらに茶色い粉をまぶした物が転がっていた。
「で、その丸っぽいやつは何なんだ?」
「これですか?これは異国で食べられている菓子でして、『ちょこれーと』と一緒に入っていた書物にこれの作り方が書いてあったので政宗様のお口に合うように作っていたのですが」
なかなか難しいものですなと照れくさそうに笑う小十郎を政宗は微笑ましく見ていた。しかし、突然何かに気付き小十郎の肩を掴み、顔を接吻出来そうなくらい近付けてきた。
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