Saint Valentine's Day.小話集

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『義理チョコは千円以上が平均らしい。』 「何しに来やがったテメェ」 「そう睨むな。私と卿との仲ではないか」  バレンタインデーから数日後、久秀が小十郎の元を訪ねてきた。先日政宗の六爪と人質になった部下をめぐって戦ってからそう月日は経ってないにもかかわらず、だ。そんな久秀の神経に呆れながらも警戒心を全開にして久秀を迎える。 「テメェとお友達になった覚えはねえ。さっさと用件言って失せろ」 「つれないな。まだあの事を根に持っているのかね?」 「分かっているのなら何故のこのこ俺の元へやって来た?」  今にも抜刀しかねない雰囲気に普通の人ならその場から逃げだすような小十郎の様子に臆することもなく、そうさなぁと久秀は言葉を続けた。 「卿から異国の菓子をいただこうかと思ってね」 「はあ?」  久秀の意外な返答に小十郎は一瞬何を言ってるのか分からず、つい聞き返してしまった。 「なに、独眼竜から卿の手作りの菓子を貰った事を自慢げに話すのを聞いて欲しくなったのだよ」  久秀の話を聞き、主の自慢げに語る姿を目に浮かべた小十郎はこめかみをおさえた。何だってかつて自分を陥れた相手と気安く世間話をしているという。今後危機感を持ってくれないとこっちの気が休まらないではないか。  今度政宗にきつく言っておかなければならないと小十郎は堅く心に誓うのであった。 「せっかく来てくれたところで悪いが、あれは政宗様のために用意したものでテメェにくれてやる菓子は一切ねえよ」  だから大人しく帰りやがれとお引き取り願うが、久秀はそれに憤慨することもなく続けた。 「そうか、残念だな。まあいい、元々ここに来たのも卿に会いに行きたかっただけだからな。菓子は後付けみたいなものだ」 「なっ!?」 「当初の目的を果たせただけでも今日は良しとしよう」  案外あっさりと引き下がった久秀に小十郎は拍子抜けしながらも、思ってもみない告白に面食らった。 自分に会いにいきたかった?
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