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「どうした?そんな面食らったような顔をして。意外だったのかね、私からの告白が」
小十郎の顔を見て少し愉快そうに久秀は笑った。まるで小十郎の反応を見て楽しんでいるかのように。
「意外というより訳が分からねえよ。俺に会ってどうするつもりだったんだ?」
まだよく分かっていない小十郎ににやりと笑う。ここまで来てまだ分からないとは、独眼竜の苦労が窺い知れるものだ。
「それ以上のことを皆まで言わせるつもりかね?」
「いや、言わなくていい」
久秀の只ならぬ笑みに嫌な予感がした小十郎は即答で断った。
「そうか。では、これで失礼させてもらう」
久秀が踵を返して帰ろうとすると、
「ちょっと待ってほしい」
玄関を出ようしたところで止められると、小十郎は奥に引っ込んだ。
やがて再び久秀の前に現れると彼の手に何やら包み紙があった。それを久秀の手にとって乗せた。中を開けてみると、茶色い丸っぽい固形物がころころと入っていた。
「右目よ、これは」
「本来なら全て政宗様にあげるつもりだったが、大量に作って余らせてしまったから。勿体無いからくれてやる。口に合わなきゃ捨てても構わねえ」
ぶっきらぼうに渡す小十郎に愛おしさが込み上げる久秀は嬉しそうに笑う。
嗚呼、参った。
どうしょうもなく目の前にいるこの男が
無性に愛おしくて仕方無い。
「いや、これは驚いた。有り難く全ていただこう。このお礼は必ずさせてもらうよ」
「テメェの施しは受けねえ」
「そう言うな。ではまた近いうちに、な」
そう言って今度こそ久秀は去っていった。その後ろ姿を眺めながら、小十郎は溜め息を漏らした。
「また近いうちに、か…。やれやれだぜ」
どうやら自分はあの男に気に入られたことに気づき、今後どうしようかと頭を悩ませるのであった。
(完)
(あとがき)
何だか主従よりも甘々になってしまいました(笑)てかどんだけ日にち過ぎてんだっていうお話orz
お待たせしてすみませんでした!!
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