松永様命日記念小説 前編(性的表現ありの為注意!)

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 政宗の居城、米沢城からほどなく近い鬱蒼とした山々に囲まれた静かな湖畔から 絶え間なく水の跳ねる音が聞こえる。そこには一人で泳ぐ男の姿があった。 男は下帯以外の衣服を脱ぎ、悠々と気持ちよさそうに泳いでいる。  彼の名は片倉小十郎。普段は政宗と共に執務に忙しいが、たまにまとまった時間が 空くとこうして一人で気分転換に泳ぎにいくことがある。彼が泳いでいる湖はさほど 大きな湖ではないが、城からそんなに距離が離れていないのにも関わらず鬱蒼と生い茂る木々に隠れるようにあったので人がくることは滅多になく、小十郎にとっては自分だけの時間が使えるお気に入りの場所としてこの湖にくることが多い。  そして今もまた一人で悠々と泳いでいる。未だ政宗は執務に取り掛かっている真っ最中でいるところだろう。そんな政宗のことを思うと自分一人だけ息抜きをしていていいのだろうかと心配したが成実いわく、 「小十郎は梵に気兼ねし過ぎだよ。本来なら梵がもっと早く書状の処理を終わらせるべきだったんだから。そのおかげで小十郎の休息時間が減っているんだからまとまった休息の一つぐらい貰っても罰は当たらないよ?」 とのことだそうで、大抵のことは成実や綱元達に任せてもらい(というかそういうことにさせられた)、思わぬ休息時間を手に入れたと言う訳だ。  せっかく二人が無理を言って与えてくれた時間を無駄に過ごすことはできない。なので小十郎は素直にこの時間を有意義に使おうと思い、此処へやってきたのだ。  ひとしきり気が済むまで泳ぎ、やがて心地よい疲労感が体を支配してきた頃に小十郎はようやく岸辺近くまで戻りひと休憩することにした。
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