Saint Valentine's Day.小話集

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「全く、おめぇさんは馬鹿だべか?雪を甘く見るからひどい目にあうんだべ!」 「うるさいな~。それは蘭丸も反省してるからいいだろ?」 「ちっともよくないべさ!あそこでおらが見つけなかったら凍死は確実だべ!」  かつて敵対していただけに先程まで三途の川を渡る直前だった蘭丸に対して容赦なく叱りつけるいつきにいささかうんざりとした顔をむけていた。  蘭丸が倒れる寸前に、ちょうどいつきが通りがかり見つけたのである。はじめ蘭丸の顔を見て自分達が敵対していた魔王の子供と気付いたが、凍死寸前の人間を放っておく訳にはいかずいつき一人で蘭丸を背負って近くにある彼女の住む村まで運んでいったのである。  子供とはいえ、魔王の手先であることを一部の農民は知っている。彼らを下手に刺激させないように一人で家まで運んでから村の長に事を伝えた。 長もはじめは魔王の子と聞いて訝しんだが、凍死寸前の人間を見殺しにするわけにはいかないといつきの説得により見張りを数人つけるという条件で蘭丸を村におくことを認めた。それからしばらくおいて蘭丸の意識が戻ったが、行く末を不安そうに見守っていた村の者達の心配をよそにいつきは蘭丸が目覚めると同時に説教を始めたのだ。  目覚めてすぐさま説教を聞かされて面食らう蘭丸だったが、自分の迂闊だった所を指摘され反論できないでいた。
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