Saint Valentine's Day.小話集

4/12
前へ
/188ページ
次へ
「だいたいお前、いちいち蘭丸に説教たれるなよな。仮にも敵同士だっただろ?」 「おらだって好きで説教してる訳じゃねえだ。だけども!おめえさんの軽はずみな行動で死んだらあの優しいねえちゃんが悲しむべ?」  いつきのもっともな言葉に蘭丸は信長と濃姫の顔を思い浮かべて少しばつの悪い顔をした。確かに自分の軽率な行動で命を落としたら二人に申し訳ないからだ。 「…………確かに蘭丸が悪かったよ。お前に迷惑をかけちゃったな」  蘭丸らしからぬ殊勝な態度にいつきは少し驚いた。しかし、先程とはうって変わって表情を和らげて蘭丸に話しかけた。 「分かってくれたならそれでいいだべ。おめえさんの国じゃ雪は珍しいからはしゃぐ気持ちは分かるべ。よかったら外が暖かくなるまでここにいたらいいんだべ」 村から許しをもらっているから心配ないべ。と続けるいつきに蘭丸は心の中で少し感謝した。 「でも、おめえさんといいあのにいちゃんといい、男の人って無茶が好きだべな。いい加減にしておかないとそのうち命を落とすべ?」 「え?」  いつきの言葉に蘭丸は思わず耳を疑った。 あのにいちゃん?自分以外にも軽装で雪国へ足を運んだ無謀な男がいるというのか。 蘭丸が訝しんでいると誰かが家に入ってきた。 「おーい、おれさまかえってきたぞー」 その特徴ある不遜な話し方は間違いない。 「あ、お帰り武蔵。今日は早かったべな」
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加