Saint Valentine's Day.小話集

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そう、自分と年は変わらないあの生意気な少年は以前に会った時と違い、防寒具を着ていたが見覚えがある。 「あれ、おまえ魔王の…」 「宮本“バカ”武蔵!」 「ばかはよけいだ!!」 武蔵も蘭丸の存在に気づいてあっとした表情になるが、蘭丸の一言に怒りのツッコミを入れた。 なぜ、何故よりにもよってこの男がここにいるのか。 そして、「ただいま」って!? 思わぬ人物の登場に蘭丸は疑問符を浮かばざるを得なかった。 そんな蘭丸をよそに、いつきは武蔵を迎えに土間へ向かった。 「あれ二人とも知り合いだべか?」 「あ、いつき。みろよ、おれさまきょうたいりょうだぞー!」  そう言って武蔵は背中に背負った獲物を下に降ろす。川魚やら雉がまとめて紐に括り付けられていた。 それを見たいつきは感嘆の声を上げた。 「わあ!!こんなに穫れただか?すごいべ、武蔵!」 「おれさまはさいきょうだぞ!このぐらいかんたんに取れらー」 「でも、おら捌けないけど…そうだ。今日はお客さんが増えたから特別に鍋をこしらえてくるから大人しく待っててけろ!」 嬉しそうに武蔵が穫ってきた獲物を村の者に調理してもらいに外へ出る。 それに我に返った蘭丸は思わずいつきを引き止めた。 「おい、ちょっと待てよ!なんでだよ!?」 「なんでって?」 「何であいつが農民の家に居座ってるんだよ!?」 「そりゃあ、おめえさんと同じだべ」 「同じって?」 「武蔵も雪山の中で迷子になってたところを村の猟師に拾われたからだべ。あんな雪の中で何していたかを聞いたら、“さいきょうになるための特訓をしていた”って!それ聞いたとき呆れて物も言えなかっただよ…」 ため息混じりに語るいつきを見て蘭丸も呆れて二の句も言えなかったのは言うまでもなかった………
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