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運転席に座る男は、妙に落ち着いた声で懐中電灯を周りに照らしながら言う。
「どうしてそんな事が言えんだ?」
後ろにいる男が運転手である男に疑問を投げかける。
「だってほら、あれを見てみ。」
その男がライトで照らす
光の先には門のような村の入り口があり、そのまわりには3メートル位はある鉄製の柵が、ライトの光で見える範囲でだが、門の周辺を覆うようにして佇んでいた。
「入り口がどうかしたか?…確かに、こんな田舎には似つかわしくない門だけどな…」
門の形状はよく映画で見る中世ヨーロッパ時代の貴族の屋敷にありそうな鉄製で、仏壇開き型の仕様であった。
こんな山奥の田舎に…
「いや、それもそれで充分変だが、俺が言いたいのは廃村扱いにされているのにも関わらず、門がバリケードかなんかで封鎖されていないのはなぜかって事。」
相変わらず男の解釈は淡々と続いている。
「人が住んでるからじゃないの?」
男の横にいた助手席に座る女はまだ状況を把握できていない。
「いや、確かに廃村扱いだったぜ、それを調べにわざわざ役所まで行ったんだ。」
「…門の周りも草がボーボーだもんね…」
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