おかえり幸

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実に14年ぶりに、一人娘の幸が我が家に帰って来た。 しかし、その顔が14年前のように笑うことは二度とない。 「1989年7月3日午後…、島根県の自宅浴室にて…、…、…。」 蝉の声に消されるような声で話す警察官の顔には、私の額にゾワゾワと浮いてくるひどく冷たい液体とは違う液体が流れている。 今年の夏は例年より暑いという。 私は今まで経験した全ての冬よりも寒く、身体の震えが止まらないというのに…。
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