第一章・破られた静寂

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その時、遠くから微かにパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。 美坂は思わず両手で両耳を押さえる。 少年が疑問に思い、聞いた。 「先生…どうしたんですか?」 美坂は苦笑して、答える。 「いやね、煩いんですよ、あの音。」 そう、美坂は人より耳が良かった。 人にはささやかな音も、美坂には大きく聞こえる。 「もうじき、警察がわんさかと来ますね。その前に聞いておきましょうか、君の名前。」 少年は聞かれて、何故かかしこまった。 「僕は1年C組、橘良介です。」 ああ、それじゃあ見覚のないはずだ。 美坂は一度教えた生徒は、忘れない。 記憶力は抜群だ。 これでひとまず彼から聞く事は全部聞いた。 だが…。 「そこ!いつまで吐いてるんです、浅田先生!吐いてる暇がおありなら、生徒達を誘導してくださいよ。」 先程から、ゲロゲロ吐いている浅田を睨み付ける。 なんで、ついてきたんだろう、この男。 そうこうしてる間に何台ものパトカーが庭園前に止まり、何十人もの警官や鑑識官が降りてきた。 「さて…どうしましょうか。」 警察に根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えている。 が、ここまで来たら後には引けない
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