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その時、遠くから微かにパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
美坂は思わず両手で両耳を押さえる。
少年が疑問に思い、聞いた。
「先生…どうしたんですか?」
美坂は苦笑して、答える。
「いやね、煩いんですよ、あの音。」
そう、美坂は人より耳が良かった。
人にはささやかな音も、美坂には大きく聞こえる。
「もうじき、警察がわんさかと来ますね。その前に聞いておきましょうか、君の名前。」
少年は聞かれて、何故かかしこまった。
「僕は1年C組、橘良介です。」
ああ、それじゃあ見覚のないはずだ。
美坂は一度教えた生徒は、忘れない。
記憶力は抜群だ。
これでひとまず彼から聞く事は全部聞いた。
だが…。
「そこ!いつまで吐いてるんです、浅田先生!吐いてる暇がおありなら、生徒達を誘導してくださいよ。」
先程から、ゲロゲロ吐いている浅田を睨み付ける。
なんで、ついてきたんだろう、この男。
そうこうしてる間に何台ものパトカーが庭園前に止まり、何十人もの警官や鑑識官が降りてきた。
「さて…どうしましょうか。」
警察に根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えている。
が、ここまで来たら後には引けない
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