第二章・まやかしの蝶

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警部補に諫められ、少しは落ち着いたのか、鼠警部は語尾を強調して美坂に言った。 「とにかく!隠してると後々、貴様の為にならんぞ。」 その言葉に怯えたのか、浅田が指を差しながら、口を開く。 「…第一発見者は、そこにいる橘です…。」 哀れ、橘少年は顔が青ざめ、子兎のようにびくんと震えた。 ━余計なことを。 美坂は冷やかな鋭い目で浅田を睨み付けた。 本当に何しにきたんだ、この男。 鼠警部は橘少年に近づくと、肩を叩き言った。 「じゃあ、君、後で署まで着いてきてくれるかな?」 美坂は微笑してそれを却下した。 「すいません、学院内は春、夏、冬休み以外は生徒は外出禁止なんです。」 許可をとれば、一応外出はできるのだが。 そこは敢えて言わなかった。 鼠警部は額に青筋を立てつつも、穏やかに言った。 「だが、これは事件だ。警察に従ってもらわなきゃならん。」 美坂はフッと笑うと、眼光鋭く鼠警部の瞳を直視した。 「これは学院内で起きた事件だ。貴方達、部外者の指図は受けない。郷に入っては郷に従え、ですよ。」 目を直視された鼠警部は、おとなしくコクりと頷いた。
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