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鹿嶋警部が警部補を呼んだ。
大柄だが、人の良さそうな警部補は急いで鹿嶋警部の元へ向かう。
一応、橘少年も後に続いた。
見ると、木に吊されていた死体は下に降ろされ、青いビニールシートの上に寝かされていた。
間近で見ると、余計に体のあちこちが傷だらけで痛々しい。
「見たくないなら、もう教室にお行きなさい。授業もあるでしょうから…」
美坂が気遣い、橘少年の耳元で囁く。
「…いえ、大丈夫です。それに…」
何故だか、この場に居なきゃいけないような気がした。
「…ほぅ…君はどうやらこの学院に選ばれたようですね…」
美坂が誰にもわからないような、小さな声で呟いた。
「えっ…?」
橘少年が聞き返す。
美坂は目を細めて、唇に人差し指を当て、笑った。
「いえ、何でもありません。」
どうやら、橘少年が死体を目撃したのは、偶然でも、必然でもなく。
━運命だったようですね。
美坂は櫻の木を見上げた。
━なら、解決してやろうじゃないか、この私が。
美坂の色素の薄い瞳が、金色に光ったような気がした。
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