第二章・まやかしの蝶

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「じゃあ、美坂とやら。貴様が一々話しかけるせいで、遺体確認やら何やらが有耶無耶になってしまったんだぞ。まったく!本当なら、公務執行妨害で逮捕するところだ!貴様にも後で事情聴取するから、もう職員室に行ってもかまわんぞ!」 鹿嶋警部が苦虫を噛み潰したような顔でまくしたてた。 ただでさえ聴取をとる人数が多いのに、いつまでもこんな奇妙な奴にかまっている暇はなかった。 美坂はニッコリ微笑むと、 「はい、わかりました。また後でお会いしましょう。それでは、橘君。行きましょうか?」 と言って、橘少年の肩を抱き、校舎の方へ歩きだした。 橘少年は鹿嶋警部と警部補にペコリとお辞儀をしてから、美坂と一緒に歩き出した。       (二) 数十メートル歩いてから、美坂がポツリと呟いた。 「自分のミスを私のせいにするなんて…困った警部さんですねぇ…?橘君もそう思いませんか?」 美坂がくつくつと笑う。 同意を求められても困る。 橘少年は思った。 確かに美坂の言うことももっともだが、鹿嶋警部の言うように美坂が捜査の邪魔をしているようにも見えた。 一体、この教師は何者なのだろう? 橘少年は美坂を見上げ、マジマジと顔を見つめた。
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