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第三章・うしろの正面だあれ?
(一)
一時間後。
教室に向かった橘少年はいつものように授業を受けていた。
普通、あんな事件が起きた時に呑気に授業なんかやってる場合じゃないと思うが、
【何が起きても授業はやる事】
というのがこの学院の創立者が決めた掟らしい。
他にもいくつか掟があるらしいが、その掟は必ず守らなければいけないらしい。
━ますます、この学校といい、先生といい、変な事だらけだ。
橘少年は鉛筆を口元に当てながら思った。
事件が気になって、授業にも身が入るわけがない。
英語教師の喋る言葉が、まるで遠くで聞こえる念仏のようだ。
今朝あった出来事がグルグルと橘少年の頭の中で駆け巡る。
と、誰かに背中をつんつん突かれた。
橘少年が後ろを振り向くと。
赤毛のそばかす少年が気さくそうに笑っている。
後ろの席の足利三太だ。
橘少年は小声で囁く。
「何だよ、サンタ。今授業中だぞ?」
赤毛で三太という名前からサンタとあだ名が付いたその少年が、同じく小声で言う。
「何だよ、お前だって授業中なのに、ボケーッと考え事してたじゃんか。」
図星を指されて、橘少年は唇を尖らせた。
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