第一章・破られた静寂

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      (二) 「それはどういうことだ!」 と、少年に掴み掛かろうとする体育教師の浅田卓朗を制し、美坂はその少年の両肩に手を置き、穏やかに尋ねた。 「まずは、落ち着いて。私が聞くことにゆっくりでいいから、明確に答えて下さい。」 いいね?と言うと、少年は頷いた。 「よし。まず、一つ。本当に庭園で人間が死んでるのをちゃんと見た?」 美坂の問いに力強く頷く。 「…そう。なら、現場に急ぎましょうか。あとは向かいながら話しましょう。ああ、誰か警察に連絡を。」 美坂の指示に英語教師の沢村恭子が動いた。 「後は、生徒達が騒がないように各クラスの担任の先生はお願いします。」 そう告げて教室を出ようとすると、 「俺も行く!」 と浅田がついてきた。 はっきりいって迷惑このうえないのだが、反論するとまたややこしいので、了承した。 現場に向かいながら、美坂は少年に聞くのを再開した。 「死体を見つけたのはいつでしょう?」 「えっと…さっき…8時十分前かな…。寮から近道の庭園を通ってきたら…桜の木にダランとぶら下がってて…」 少年が思い出したようにウッと口を押さえる。
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