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美坂は胸ポケットから、ハンカチを取り出し、少年に手渡す。
「ふむ…。それで、目撃したのは君一人ですか?」
少年はハンカチを口にあてながら、首を横に振る。
「いいえ。僕と同じくしてやってきた生徒が一人。そいつは、青ざめてすぐ立ち去っちゃったけど…」
それを聞いて、ヤバいと思った。
その生徒から他の生徒の耳に漏れてる可能性がある。
念のために聞いてみる。
「君は、職員室に来るまでに死体の事を誰かに話しましたか?」
少年はとんでもない!と言うようにブンブンと首を横に振った。
「僕、必死で!先生に急いで知らせなきゃと思ったから!だから真っすぐに職員室に行きました!」
そう…、と呟いて美坂は少年の頭をぽむぽむと撫でた。
そういえば、少年の名前を聞いてなかったな…と思い、美坂が少年に名前を尋ねようとした時、ずっと黙っていた浅田が口を開いた。
「美坂先生、あれ!」
庭園には、すでにやじうまと化した生徒達の人だかりができていた。
美坂はひっそりと眉を寄せる。
「おやおや、これはまた、えらいことですねぇ…」
美坂はポツリと他人事のように呟くと、どんどんと人だかりに近づく。
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