第一章・破られた静寂

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美坂は胸ポケットから、ハンカチを取り出し、少年に手渡す。 「ふむ…。それで、目撃したのは君一人ですか?」 少年はハンカチを口にあてながら、首を横に振る。 「いいえ。僕と同じくしてやってきた生徒が一人。そいつは、青ざめてすぐ立ち去っちゃったけど…」 それを聞いて、ヤバいと思った。 その生徒から他の生徒の耳に漏れてる可能性がある。 念のために聞いてみる。 「君は、職員室に来るまでに死体の事を誰かに話しましたか?」 少年はとんでもない!と言うようにブンブンと首を横に振った。 「僕、必死で!先生に急いで知らせなきゃと思ったから!だから真っすぐに職員室に行きました!」 そう…、と呟いて美坂は少年の頭をぽむぽむと撫でた。 そういえば、少年の名前を聞いてなかったな…と思い、美坂が少年に名前を尋ねようとした時、ずっと黙っていた浅田が口を開いた。 「美坂先生、あれ!」 庭園には、すでにやじうまと化した生徒達の人だかりができていた。 美坂はひっそりと眉を寄せる。 「おやおや、これはまた、えらいことですねぇ…」 美坂はポツリと他人事のように呟くと、どんどんと人だかりに近づく。
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