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ドアを開けて入ってきたのは刑事の緑川 駿だった。50代になる彼は渋い雰囲気を漂わせていた。タバコが好きで、いつでもタバコを口にくわえている。頑固そうな外見とは裏腹に物分かりのいい、とても良い人物なのである。
「よお、南。おっ、坊主もいたのか」
香野はねんがら年中、南の探偵事務所に遊びにきていて、探偵事務所を度々訪ねてくる緑川とは顔見知りになっていた。
「坊主じゃなくて香野だよ」
香野は、そう言って緑川を少し睨む。それを見て南は微笑む。
この光景はいつもの事だった。だが何度見ても飽きがこない不思議なやり取りだ。
笑顔のまま南が緑川に話しかける。
「緑川さん、今日はどうしたんですか?」
緑川は思い出したように南に凄い勢いで迫る。
「どうもこうもないだろ!お前、あのファントムから犯行予告がきたんだろ!」
恐持ての顔で迫られた南は顔を少し引き攣りながらも緑川に話しをする。
「ええ、きましたよ。ちょっと落ち着いてくださいよ緑川さん。まずは座ってください」
「おお、じゃあ失礼するよ」
そう言って緑川は香野の隣に座った。
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