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総司は口には出さないが、ここにいるメンバー全員には心から感謝していた…。
ギターもベースもドラムも、それぞれ業界ピカ一の実力を持っているのに、サポートメンバーとして側にいてくれている。
総司はバンドという形で、束縛したりされたりするのが嫌いだったからだ。
メンバーはメンバーで空いた時間をそれぞれ好きな音楽に没頭していたりするが、総司はいつも申し訳ない気持ちと隣り合わせだった。
「…お前の気持ちはわかるが、それは驕りというもんだぞ」
そう…このメンバーはいつも総司が何も言わなくても彼の心境を察してしまう。
そんな不思議な繋がりがある。
「…いや、驕りとも少し違うと思うけど…」
「問答無用。…ゴンちゃん」
ギターはドラムに何かを指示した。
すると、ガタイの良いドラムが総司を羽交い締めにする。
「わっ…ゴンちゃんまで…」
すると総司を抜いたメンバーがあっさりと会計を済ませた。
「…お前らそれ驕りっていうんじゃ…」
総司が呆れ顔でギターに訴えかけた。
ギターは総司に不適な笑みを見せ、言う。
「…そうだ。奢りだ」
──なんだよ、その活字じゃないとわかんないようなギャグ…。
総司はそう思いながら渋々メンバーに従った。
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