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月子は真っ暗な部屋の大きな窓から夜景を見下ろしては、溜め息をついた。
また飛んで行って月や星を見たいと願っても…どうしたわけか、この部屋から出られなかった…。
部屋の中をふわふわ漂うも、壁を抜けて外へ飛び立つという芸当ができなかった。
──今、何時なんだろう…。
この家の人…帰ってきて私みたいなのがいたらびっくりしちゃうかな…。
でも、もしかしたら私の事見えないかも…ね。
それはそれで…寂しいかもしれないなぁ。
月子はソファの上でうずくまり、声を押し殺して泣いた。
もう…誰にも会えない。
誰も私に気付いてくれないかもしれない…。
お父さん…
カッちゃん…
私もう嫌だよ…
──カチャッ
どこからか、鍵が開けられる音がした。
──ガチャ…バタン
玄関が開けられた…
ドタドタと足音が、月子のいる部屋へと近づいてくる…。
(…ど…どうしよう…)
月子は考えた。
この足音の主は月子の事が見えないかもしれない…そうすれば月子は…ひっそりとここにいれば、寂しいが平和的に事は済むだろう。
しかし、もし月子が見えたら…
事態はある意味最悪だ…事情を話して信じてもらえるのだろうか…。
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