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「…あ…あのぅ…」
「……何?」
総司の低い声に怯まない様に意識しながら、月子は次の言葉を発する。
「………窓を…開けていただけませんか…?」
総司は黙ったまま月子を見ていた。
「…この窓は開かないよ」
確かに…こんな大きな…一般家庭で言ったらベランダに出るタイプの大きさの窓が開いたら転落の危険もある。
「そう…ですか」
「…なんで?」
総司は努めて優しく問うが、月子にはその口調さえも冷たく感じてしまう。
「…もう少し…ここから出れる方法を…探してみようかなと…思いまして」
月子は遠慮がちに話す。
「………………」
総司は黙ったまま外を見つめ続けていた。
「あの…ですから、すぐに出て行きますから…それまでは………ごめんなさい」
月子の声は消え入りそうだった。
総司と目が合うたびに怖くて逸らしてしまう。
それに気付いたのか、総司は外に目をやりながら言った。
「……早く…出ていけよな」
総司の口調は優しかったが、言っている事は冷たいものだった。
月子はその言葉を掛けられると覚悟はしていたのに、いざ言われると驚く程に胸が痛んだ。
「………………」
「………………」
二人はただ黙った。
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