**プロローグ**

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──6月10日。 この一週間続く雨に誰もが憂鬱な気持ちと戦っている頃…。 東京のとある場所にある巨大ホール。 今日はある人気シンガーのライヴという事もあり、大勢の人々が行き来している。 ホールでは数千人の観客がステージに注目し、一人の男を待つ。 そんな中に、一人の少女はいた。 少女と言っても、もう二十歳の立派な成人女性だ。 前列から5番目位にいる彼女。 腰まで長く、ふんわりとカールした栗色の髪。 そんなに大きい訳ではないが、ぱっちりしていて少し色素の薄い瞳。 スモークピンクのワンピースに裾から見せる様に白いスカートをおしゃれに重ねている。 身長は150センチ、顔立ちはあどけなさを残した顔…要は童顔だ。 それが少女のように見えてしまう所以だ。 彼女の名は倉持月子(くらもち つきこ)。 今日は一人でこのライヴに来ていた。 開演時間になり、全てのスポットライトがステージへと向けられた。 月子の胸が高鳴った。 途端にホール全体から凄まじい歓声があがる。 その先にいるのは、今人気絶頂のシンガーソングライター、浅羽総司(あさば そうじ)だ。 .
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