**プロローグ**

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総司の唄うバラードは、哀愁たっぷりのブルージーなものが多い。 この、消えてしまいそうなろうそくの炎のような切なさは、女性シンガーでは出せないと月子は感じていた。 “夢に見ていた 君との未来も 今ではもう 朧気な残像…” 月子はそんなに恋愛経験豊富な方ではないが、歌詞の中の主人公の胸の痛みだけはダイレクトに伝わってくる。 そして総司の唄う時の表情に、消え入りそうなビブラートは更に切なさを誘う。 気付いたら月子は涙を流していた…。 そしてまたアップテンポの曲で会場を沸かせ、バラードで泣かせ… あっという間に時間は過ぎていき… 会場からは「アンコール」の掛け声。 そしてまたスポットを浴びた総司が登場。 『皆さん、本日は誠にありがとうございます…。 ではではたくさんのアンコールを頂きましたので、オーラスはこの曲でいきます……籠の鳥…』 会場がわあぁっとどよめいた。 3年前くらいにリリースされた総司の名曲のひとつ。 大好きな人を束縛してしまう主人公が苦しむ歌で、これまた切ない曲だ。 バラードではなく、ミディアムテンポな曲なのだが、哀愁だけは伝わってくる。 .
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