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「危ない!!」
月子の背後から、見知らぬ男性が叫んだ。
月子は自分には関係ない物だと思いつつも、ゆっくり振り向こうとする。
「…………へ…?」
気付くと、真っ白なヘッドライトが月子を目掛けて突進してきている。
次の瞬間、月子の全てがスローモーションになった。
──あぁ…
私、死んじゃう…。
お父さん…ごめんなさい。
…出来る事なら、一度だけ…浅羽さんに会ってみたかったなぁ。
一人ぼっちの私を救ってくれた…
たくさんの優しい歌たち。
…ごめんなさい。
…私…やっぱ駄目な子だね…。
……最期まで…たくさんの人に……迷惑かけちゃう……。
………ごめんなさい。
次の瞬間、月子は意識を手放した…。
後に残るのは、人々のざわめきと、けたたましいサイレンの音………。
──あれ?
私…生きてる?
月子は不思議に軽い自分の体に違和感を覚えた。
「私…浮いてる!?」
月子の体は宙をふらふら漂っていたのだった。
ふと下を見下ろすと、救急車の周りにたくさんの傘をさす人々…そして自分がいたであろう場所を囲む救急隊員たち…。
恐らくその中心には車に轢かれた自分自身…。
「………いや…」
月子は…事故にあったであろう自分自身を見る勇気がなく、目を逸らした。
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