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「………やっぱり私…」
──死んじゃったんだ…
認めたくない…。
認めるのが怖い…。
「…うっ…あぁ……っ…」
迫り来る車への恐怖…そして全てを失ってしまった不安。
そんなものに向き合える程月子は強くはない。
月子は泣きべそをかきながら、雨の中漂っていた。
降りしきる雨は月子の体をすり抜け、下へ落ちて行く。
月子はそんな虚しさから逃げたくなり、なんとなく上へと目指して飛んでみた。
自分の死を…目の当たりにできなかった。
雲を抜けると月明かりが明るく、星空が綺麗に見えた。
「…はぁ~、綺麗だなぁ」
何も考えたくなくて…月子はとりあえず星を眺めていた。
すると突然、強い風の様なものに月子の体はさらわれた。
月子はもう逆らう気力もなく、その微かに温かさを感じる風に身を任せてみる事にした。
ふと、気付くとそこはどこかの家の中だった。
「ここ…どこだろ?誰の家かな?」
この家の主は留守なのか、部屋には灯りがともってなくほぼ真っ暗だった。
窓を見ると、しとしと雨の中、少し滲んだ夜景が綺麗だった。
どうやら、ここはかなり高層なマンションの様だ。
「さっきの星の方が綺麗だったな…」
月子は夜景を見つめながら呟いた。
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