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「浅羽さん、お疲れ様でした!!」
「おー、お疲れさん」
ライヴが終演してから、総司はサポートメンバーやらスタッフと挨拶を交わす。
そして自分の楽屋に入り、どっかりと椅子に座る。
ぼんやりと目の前のでかい鏡を見つめながらライヴを思い返す。
ふと、アンコールの時に目に付いた少女を思い出した。
前列の方は逆光で見えなかったりするのだが、たまたまその少女だけはしっかり見えた。
「…確かに印象に残りそうな可愛い子だったけどな」
──でもタイプじゃない。
もっと、セクシーな女の方が好きだ。
そう、例えば……美由紀の様な。
「…って何考えてんだ俺は」
そう言って缶コーヒーに口を付けた。
「…男って…女々しいもんなんだよな」
──美由紀は、3ヶ月前に別れた…というより振られた総司の元恋人。
モデルをやっている彼女は、凄く美人でスタイルも良く…何より体の相性も良かった。
付き合うとすぐに総司は骨抜きにされてしまい、彼女に夢中な毎日だったのに、3ヶ月前…美由紀は突然去っていった。
総司の理想の女だった。
ライヴの後の爽快な気持ちは、胸を締め付ける思い出によって打ち砕かれていた。
「……余計な事考えてないで…打ち上げ行かなきゃな」
総司は…気を取り直して立ち上がり、シャワーを浴びに行った。
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