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「晋ちゃん………。」
彼を見る、私の声も少しかすれた。
「晋ちゃんは、毎日、そうやって悲しさの苦しみの中で生きているの?
ブランドやカメラだって…自分のためじゃなく。ミキさんのためなんでしょ…?
そんなの…悲しすぎるよ………………」
晋ちゃんは何も言ってくれなかった。
私は唇をかみしめて言った。
「ある人からの…………伝言です…。
『あなたは充分苦しんだ…だから、もう、過去にとらわれちゃダメだよ。自分のために生きなきゃ。自分のために笑わなきゃ………』」
瞬間。右腕をひっぱられて傘が宙に舞った。
雨が頬濡らして、
私は彼に抱きしめられた。
強く。
強く。
心の痛みをぶつけられるように
彼は私を抱きしめた。
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