【静かな幕開け】

14/26
9934人が本棚に入れています
本棚に追加
/1904ページ
道場の重い扉を開けて中に入ったら、親父が厳格な面持ちで膝に手をあて腰を据えて座っていた。 道場には張り付くような神妙な空気が立ち込める。 真摯ななまざしが俺を見つめ捕らえたきり、外される事はない。 嫌味の一つでも言ってやるつもりだったのに、そういう雰囲気でもなさそうだ。 「…………。」 急に親父が立ち上がる。 そして竹刀を俺に向かって投げつけた。 俺の目の前で竹刀が音を立てて落ちる。 「……構えなさい」 親父の手にも竹刀。 打ち合う……のか? 「……防具は?」 「必要ない」 “必要ない”って、あるに決まってる!! 竹刀で防具無しで打ち合いなんて、危ねぇ~じゃねぇ~かよ!! 下手したら怪我もんだぞ!? 親父の意図する事が全く掴めなくて、考えている余裕も与えてはくれない。 親父はすかさず打ちにきた。          
/1904ページ

最初のコメントを投稿しよう!