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道場の重い扉を開けて中に入ったら、親父が厳格な面持ちで膝に手をあて腰を据えて座っていた。
道場には張り付くような神妙な空気が立ち込める。
真摯ななまざしが俺を見つめ捕らえたきり、外される事はない。
嫌味の一つでも言ってやるつもりだったのに、そういう雰囲気でもなさそうだ。
「…………。」
急に親父が立ち上がる。
そして竹刀を俺に向かって投げつけた。
俺の目の前で竹刀が音を立てて落ちる。
「……構えなさい」
親父の手にも竹刀。
打ち合う……のか?
「……防具は?」
「必要ない」
“必要ない”って、あるに決まってる!!
竹刀で防具無しで打ち合いなんて、危ねぇ~じゃねぇ~かよ!!
下手したら怪我もんだぞ!?
親父の意図する事が全く掴めなくて、考えている余裕も与えてはくれない。
親父はすかさず打ちにきた。
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