『つまらない日常が終わる前日』

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そして時間が過ぎ、閉店時間の20時になり店を閉めた紅はレジにいる男の元に向かった 「店長お疲れ様でしたー!」 「お疲れ様でした、神羅さん」 ニコニコしながら言った紅に対し、男は穏やかな表情で返した。 彼は紅が働く本屋の店長で、紅を娘のように思っている人物だ。 「店長、取り置きの本を買いたいのでレジお願いしまーす!」 取り置きしていたBRAVE10のコミックを取り出すとカウンターに置いた。 「あぁ、そういえば今日発売日でしたね」 「はい!もう新刊出るのを待ってましたから」 バーコードを読み取りながら言う店長に紅は財布を取り出しながら嬉しそうに答えた。 そんな紅に微笑むと、店長は苦笑しながらも金額を言った。 「うぅ~早く家に帰って読もう!!」 大事そうにコミックを鞄に入れると、紅は自分の家に足早に向かった。 因みに紅の家はバイト先から10分ぐらいの距離なのですぐに着く。 「ただいま~」 ガチャっと家の鍵を開けて入ると誰もいないのに言ってしまうのは最早癖になっている。 そして上着を脱ぎ捨て、スウェットに着替えると紅は袋からBRAVE10を取り出して静かに読み始めた。 それから20分ぐらい経ち、パタンと本を閉じると、紅は本をお腹で抱きしめるように目を閉じた。 「…伊佐那海、才蔵が絶対助けに来てくれるからね…」 ポツリと呟くように言うと目を開けてコミックの表紙を見つめた 「…でも、伊佐那海が羨ましいな…」 才蔵に守ってもらえて、とまた呟くと本を机の上に置いた 別に紅は伊佐那海の事は嫌いではない。 …只、彼と共に居られる、ということに羨ましいのだ。 紅と才蔵は所詮次元が違う。 サイトにある夢小説によくあるトリップでもしない限り、出会う事等ないのだから 「…さて、晩御飯作るかね~」 そんな考えを振り払うように言うと、紅はご飯を作りに台所に向かった。 …そんな紅の言葉に反応するように、また本が微かに光っている事にまたもや気付かない紅だった。
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