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始まりは、まだ彼が小さく、子供で…誰かに守って貰っていた、そんな時だった。
小さな農村で育った少年が居る。
名前はベノム。
ベノム=クラウン。
辺りは山々に守られ、それほど裕福ではないが、不幸でも無い程度には幸せな村だった。
男も女もせっせと楽しく働き、動物や子供は山から恵みをうけすくすくと育っていく。
「ベノム!ちょっと手伝ってくれないか?」
畑で作業をしていた父が呼ぶのだが、ベノム少年はムッとあからさまに顔をしかめては、不機嫌丸出しに応えた。
「父さん、この間も言ったろ僕は邪魔だって…なんで、邪魔な僕が手伝えるって思うのさ、また邪魔するだけだよ」
そう、少年は卑屈だった。
力もなく、気弱で、根暗…挙げ句の果てには卑屈。
良いことは何もないが、優しい両親には恵まれていた。
父親はベノムを少し見てから溜め息混じりに、また畑を耕す。
時間がくれば母親は家の前に立ち、今収穫したばかりの野菜と少しの肉で昼食を作ったことを告げるだろう。
そんな平和な毎日。
のどかな農村。
土にまみれた父の手足。
草のにおい、山の息つく命。
それら全てが全て総じて全部、ベノムは大嫌いだった。
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