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何が大嫌いになる要因かなどは、決まっている。
生暖かい家族がいやだ。
山には虫が居るし、土で汚れるし、歩きにくいし、それに不便だし、夜なんて鼠だって来る…この間なんて噛まれたばかりだ。
嫌いな理由はまだある。
小さな村だから、皆が知り合い。
つまり小さい頃から まるで家族のように年をとる…だからこそ嫌なのだ。
「おじさん、手伝うよ」
「おぉ、クレイ。いや、いつも悪いしな…今回は…。」
ベノムの父親に声をかけたのは、この村で一番かっこ良くて優しい、ヒーロー候補だった。
少しばかり余談をするとしよう。
この世界にはヒーローが居る。
ヒーローつまり英雄だ。
ヒーローと言う仕事なのだが、選ばれた人間にしかなれない職種で、やはりヒーローになった人は かなり特別な扱いをしてもらえる。
更には、ほとんど生活は保証され人間の皆が、歓迎する。
ヒーローは…ヒーローの仕事はもちろん、世界を平和にすること。
大昔の話だが。
昔、魔物と呼ばれる人間とも動物とも違う種族が人間を襲い破滅への道を転がろうとしていた時、勇敢な戦士が魔物を倒しヒーローと呼ばれた。
それからと言うもの時代は変わり、ヒーローが仕事として人間に定着したのだ。
定着した理由も解るだろう。
魔物はまだ居るからだ。
近年では、まだ目立った動きもみられないから戦いは無いらしいが…それでも、治安維持としてヒーローはまだ居た。
それに、この村の近くにある――正しくは村の半面に接する森には、確かに魔物がおり、村では一人では入ってはならないという暗黙の了解もあった。
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