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「―――い、お~い、和樹、起きろ~」
春の心地好いまどろみから急に現実に引き戻すような声が聞こえてくる……。
「う、うん、なん、だよ、公ちゃん…」
「何だよとは失礼だな、給食前に起こしてくれって言ったのは和樹だろっ」
机に突っ伏しているオレの前に立って怒っている男。
名前は伊原公祐、コイツはオレと同じクラスで今、一番仲の良いヤツだ。
あっ、忘れてたけどオレは公ちゃんの親友の大蔵和樹だ。
「あぁ、そうだった……今、起きるから」
突っ伏したままで目を擦りながら公ちゃんに答える。
「まったく、お前は、いつもマイペースすぎるんだから……」
「悪かったな……ふぁぁ、よく寝たぁ~」
イスから立ち上がると、手を突き上げて固まって関節を伸ばすように大きく伸びると大きなため息をひとつついた。
「ほら、早くしないと給食無くなるぞ」
公ちゃんのその言葉に急かされてオレも一緒に給食を取りに行くと、いつものように、オレと公ちゃんは机を合わせ、給食を食べ始めた。
「ところでさぁ、和樹」
「うん、何?」
公ちゃんが急に聞いてきたのでオレは牛乳を飲みながら答える。
「最近、関口さんとはどうよ」
「ブッ!!な、何だよ急に、公ちゃん…」
よきして無かった事を聞かれてオレは飲んでいた牛乳を吹き出してしまった。
「うわぁ!!きったねぇなあ」
オレが吹き出した牛乳を少しかかってしまって公ちゃんは大分怒っている。
「ゴメン、でも、公ちゃんが変な事、聞くから悪いんだよ」
「だって気になるじゃん、……知ってるのオレしかいないんだから」
途中から小声で話すからオレも顔が赤くなるのが分かる。
公ちゃんが言った関口さんとは、オレが中学校に入ってすぐに一目惚れしてしまった、女の子だ。
「だから、何にも無いって、悔しいけど……」
そうなのだ、オレと関口、そんなに仲は悪くないのだが、可もなく不可もなく、つまり、良い友達の関係………、そう思うとものすごく悲しくなってきた。
「お、おい、落ち込むなよまだ2年だろ、時間はまだあるから和樹にだってまだチャンスあるって」
「そうだと良いけど……」
オレはそのまま、暗いテンションで給食を食べ終え、公ちゃんと一緒に中庭へと向かった。
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