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「こっちは何度も酒を台無しにされてるってのに……!」
「ま、待ってくれお客さん!
この子は悪気があって言った訳じゃ」
「さてはあのグーテを操ってたのはお前か?!
おい! お前ら、戻って来い!」
店主を無視して勝手に結論づけた男は、
今度は店を飛び出していった仲間を呼び始めた。
「まずい……お客さん、逃げなさい!
あの人は有名な審査員なんだが、一度キレると手がつけられなくなるんだ!」
「あなたも随分苦労してるんですね……ご忠告どうも!」
店主の囁きにお礼を言うと、
お金を払って少女は男をすり抜け、正面扉から飛び出した。
「逃げたぞ!追えー!」
怒号と共に男達が少女を追ってくる。
行き交いの多い表通り、少女は荷馬車から荷物を出し始めた業者団体の中へとへ突っ込んでいった。
楽しげに唇をあげた後、何事かを呟きだす。
「『人が歩む道とは障害物が多いものだ』」
少女の呟きに合わせるかのように、前方の荷物が動き始めた。
「『しかしてその障害物は
ただ必ずしも自分を妨げる物ではない』」
業者が気の付かないわずかな距離に、荷物達は移動した。
数秒で少女は荷物で空けられた間隔を真っ直ぐ走り去る。
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