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「『障害物とは移動してしまえば敵の妨げとも成りうるのだ』」
直後、荷物の群れは大きく動き、突っ込んできた男達の真ん前へと……
予想通りの派手な音を後ろで聞きながら、少女はにこやかに走り続けた。
一方、その頃。
リズミカルな軽い音をさせて、青髪の女の子はしてやったりの表情で走り続けていた。
誰も追ってきていないのを確認すると、ポツンと立っている街路樹のふもとでようやく止まる。
笑みを浮かべながら遥か彼方に位置する酒場を見る真似をした。
「大体まいたか……さすが俺、素晴らしき駿足!」
「駿足って事は、君は走りのグーテかい?」
突然かかった声に、小さな体は勢い良く飛び上がった。
どこから聞こえてきたのかと辺りを見回すが、目に付いたのは街路樹の緑のみ。
クスクスという笑い声と同時に、目の前の葉っぱの塊の中から人の頭が飛び出した。
「ぎゃあぁああぁっ!」
「お、いい声。なかなか丈夫な声帯を持ってるね」
半ば腰を抜かしながら、女の子は叫んだ。
「だだだだだ、誰だお前!」
その反応に依然笑みを浮かべながら、黒髪の少女は木から降りた。
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