1.酒場の灰皿は空を飛ぶ

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一つの、町。 多少風が砂を巻き上げて人々を困らせるが、上々繁盛している町だ。 しかもこの時期、より人がわんさかと来る、そんな町…… そこには、小さな女の子がいた。 青に一筋の黄と緑の線が入った髪をいじり、同じ色の目をキョロキョロと動かす。 誰もいないのを確かめると、女の子はニヤリと笑った。 裏路地を小走りに抜け、錆び付いた赤いドアを開ける。 ドアの音が聞こえないように細く開けると、 女の子ははおった青の羽マントをひるがえし、入っていった。 ドアの右上、レンガの壁に刺さった『BAR』と書かれた鉄の看板が、 ゆっくりときしんだ。 「ここ、とってもいいお店ですね」 カウンターに座った客の手が、 氷と液体の入ったグラスを揺らす。 「そうかい? そう言ってもらえると嬉しいね」 少々やせ肩の店主が、 カウンター越しに客に微笑む。 「ええ、飲み物もおいしいし」 長い黒髪がほめるように揺れる。 しかし、それを聞いて店主が少し苦笑いをした。 「そりゃ実際酒を飲んでくれてたら 嬉しいんだけど……」 客が持ったグラスを指差す。 正しくは、その中の液体。
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