1.酒場の灰皿は空を飛ぶ

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「酒屋でジュース飲まれてもねえ…… ていうか、買った奴なんだけど、それ」 店主の言葉に、客のかけていた眼鏡が少しずれる。しかし、 「マスター、『BAR』と自称している店が酒屋なんて言ったらお終いですよ。 ここはあくまで上流な気分を味わう、『BAR』です」 のほほんとした笑みに、店主はただ静かに笑みを返していた…… 「ところで、いつもここってこんなに繁盛してるんですか? すごい儲かりようですねぇ」 「何言ってんだ、今週はグーテの授与式の週だろ? お客さん、それが目当てでここに来たんじゃないのかい?」 板張りの店に集まった人を振り返る どう見ても大人とは思えない少女の客に、店主がいぶかしげに声をかける。 その言葉に、少女は首を傾げた。 「授与式……ですか?」 「ああ、世界の要のグーテは、この町でしか正式に授与されないのさ。 違法でこっそり使ってる奴もいるけどね、 追われながら使うより正々堂々とここで授与した方が……」 そこで、店主の言葉が止まった。 少女の顔には『良く分かりませーん』というセリフがありありと書かれていたのである。 しばらく考えていた少女は、微笑んで口を開いた。
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