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「グーテって、なんですか?」
しばしの沈黙。
そして、店に店主の大声が響いた。
「何ぃぃい!!!!??」
店中の客が振り向いた中で、
店主は先ほどよりもぐっと少女に顔を近づけていた。
「お客さん、あんた本当にグーテを知らんのか?!」
「知りません」
さわやかに返された返事の裏に、
『もちろん教えてくれますよね』という少女のセリフがしっかり糊付けされてあるのを店主は悟った。
「グーテっつーのは……簡単に言うなら、不思議な力を使う生物の事だな」
店主は店を見渡し、
丁度レジ打ちが終わって暇そうな一人の店員を呼んだ。
「おぉい、そこのグーテ!
しばらく休憩していいぞ!」
「はい、ありがとうございます!」
グーテ、と呼ばれた店員は聞くが早いか店主の方へと近づき、目を閉じた。
流れるようにその体が溶け、店主の腕輪へと吸い込まれる。
店員の体はすっぽりと腕輪の中心のへこみへと翠の珠になって納まった。
「こいつは、『人手のグーテ』さ。
今ここで働いてる店員全員が、一体のグーテだ」
少女が見渡してみると、
なるほどここやそこに見える店員達は全員、同じ顔をしている。
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