1.酒場の灰皿は空を飛ぶ

7/8
前へ
/283ページ
次へ
女の子はその内のボス格、と呼べそうな大男のテーブルの真下に来ていた。 男の見ていない隙に二つの吸殻が満載の灰皿の位置を並べ替える。 「ああ、成程」 大体女の子のする事に予想のついた少女は、 一体何を見ているのかと不思議がる店主の方へと視線を戻した。 「せーの……」 音頭を取り、女の子が拳を固めてテーブルの裏に叩き込む。 「うりゃああっ!」 突然一定方向に力を加えられたテーブルは、その上に乗っていた酒瓶や灰皿を吹き飛ばす。 特定の位置にあった灰皿は、団体客の他の二つのテーブルへと弾丸のように落下した。 轟音と共に全てが吹き飛んだニ、三個のテーブル達を見て、 少女はいたずらの鮮やかさに少し笑った。 一緒にその様子を見ていた店主がため息をつく。 「やれやれ、またあのグーテか……」 「また?」 首を傾げた少女に、どこから説明しようか考え、店主が言った。 「言っただろ? もうすぐグーテの授与式だって。 そのための審査員がうちのここんところの常連さんなんだがね、 何故だか知らないけど毎日あのグーテがああやってちょっかいかけていくのさ。 一体なにがしたいんだか……」
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加