120人が本棚に入れています
本棚に追加
女の子はその内のボス格、と呼べそうな大男のテーブルの真下に来ていた。
男の見ていない隙に二つの吸殻が満載の灰皿の位置を並べ替える。
「ああ、成程」
大体女の子のする事に予想のついた少女は、
一体何を見ているのかと不思議がる店主の方へと視線を戻した。
「せーの……」
音頭を取り、女の子が拳を固めてテーブルの裏に叩き込む。
「うりゃああっ!」
突然一定方向に力を加えられたテーブルは、その上に乗っていた酒瓶や灰皿を吹き飛ばす。
特定の位置にあった灰皿は、団体客の他の二つのテーブルへと弾丸のように落下した。
轟音と共に全てが吹き飛んだニ、三個のテーブル達を見て、
少女はいたずらの鮮やかさに少し笑った。
一緒にその様子を見ていた店主がため息をつく。
「やれやれ、またあのグーテか……」
「また?」
首を傾げた少女に、どこから説明しようか考え、店主が言った。
「言っただろ? もうすぐグーテの授与式だって。
そのための審査員がうちのここんところの常連さんなんだがね、
何故だか知らないけど毎日あのグーテがああやってちょっかいかけていくのさ。
一体なにがしたいんだか……」
最初のコメントを投稿しよう!