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店の参事を嘆く店主を尻目に、
少女は人事のように審査員と言われた男達と小さなグーテの様子を見ていた。
ボスらしき男が持っていた酒瓶を床に叩きつける。
「このチビ! 何回俺達の酒を台無しにすりゃ気が済むんだ!」
それを聞いて、グーテは不満げに鼻を鳴らした。
「何回、だと?
言われなきゃ分かんねえか!
お前らが俺の目の前からからいなくなるまで何回もだよ!」
そう捨てゼリフを残して、捕まえようと腰をかがめる男の頭を軽々と乗り越え、
グーテはすたこらさっさと店の外へ逃げ出していった。
「畜生、待ちやがれ!」
男達はいきりたって酒場を飛び出していった。
ぐしゃぐしゃになってしまった机の群れを、店のグーテ達があわてて片付けていく。
その様子を一部始終見ていた少女は、クスクスと笑った。
「あのグーテ、なかなか面白い事をしますね。少し気に入りました」
笑顔で言う少女に、店主がこっちは大損だよ、と苦笑した時。
「何が面白いんだ、ガキ」
低い声に、少女は青ざめた顔の店主の真後ろを向いた。
先程怒り狂っていた集団のボスらしき大男。
否、怒り狂っているのは今も、のようだ。
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