1.酒場の灰皿は空を飛ぶ

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店の参事を嘆く店主を尻目に、 少女は人事のように審査員と言われた男達と小さなグーテの様子を見ていた。 ボスらしき男が持っていた酒瓶を床に叩きつける。 「このチビ! 何回俺達の酒を台無しにすりゃ気が済むんだ!」 それを聞いて、グーテは不満げに鼻を鳴らした。 「何回、だと? 言われなきゃ分かんねえか! お前らが俺の目の前からからいなくなるまで何回もだよ!」 そう捨てゼリフを残して、捕まえようと腰をかがめる男の頭を軽々と乗り越え、 グーテはすたこらさっさと店の外へ逃げ出していった。 「畜生、待ちやがれ!」 男達はいきりたって酒場を飛び出していった。 ぐしゃぐしゃになってしまった机の群れを、店のグーテ達があわてて片付けていく。 その様子を一部始終見ていた少女は、クスクスと笑った。 「あのグーテ、なかなか面白い事をしますね。少し気に入りました」 笑顔で言う少女に、店主がこっちは大損だよ、と苦笑した時。 「何が面白いんだ、ガキ」 低い声に、少女は青ざめた顔の店主の真後ろを向いた。 先程怒り狂っていた集団のボスらしき大男。 否、怒り狂っているのは今も、のようだ。
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