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おかんに、
「和志くん、茨城に引っ越すねんて」
と聞かされた俺は、一も二もなく隣の部屋の呼び鈴を鳴らしていた。
「はいはい」
インターホンにでたのは、和志だ。
「俺、哲平。話があんねん」
「うん、今出る」
俺と和志は幼馴染みだ。家はマンションの隣同士。幼稚園も小中学校も、高校も同じで、この先もずっと一緒にいると思っていた。
なのに引っ越しだって?
そんなの、一言も聞いてない。
「なんやねん哲平、機嫌悪いんか?」
俺を自室に案内してくれた和志が、眉間にしわを寄せる俺を見て不思議そうな顔で問う。
「よくないな」
「なんで?」
どうやらおばさんは外出しているようで、家の中はしんとしている。二人の声が部屋に響いて、何だか落ち着かない。
「引っ越すねんて?」
「情報早や」
「茶化すなや」
「ごめんごめん。じいちゃん達と同居することになったんや。ばあちゃんにな痴呆が出てきたから、側におらな心配やねんて」
「……で、いつ引っ越すん?」
「一学期が終わったら」
「えっ……?」
今日はもう六月で、学期末までもうふた月もない。
「なんでもっと早く言ってくれへんかってん」
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