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「なんか高級そうなんですけど」
「そんなことないんじゃない?」
先生が連れてきてくれたのは、中華街の中でも一番目立つ場所にあるお店だった。首都高に乗ってどこに行くのかと思ったら着いた先は横浜で、更に驚いたことに店の予約がしてあった。
「前菜でございます。クラゲと金華ハムとピータンになります」
ウエートレスがきれいに盛りつけられた皿を置いていく。
「さあ。どうぞ」
「いただきます」
先生に勧められて箸をつけた。
「うわ、おいしい! このクラゲ、こりこりしててすっごいおいしい!」
「そう、それはよかった」
「こっちのハムもおいしい!」
「うん」
多分、じゃなくって絶対高いってこのお店。だってこんなおいしい中華、今まで食べたことがないもん。
ちらりと先生を見る。先生はいつもと変わらない顔で食事をしている。
「ん? なに?」
僕の視線に気づいた先生が軽く首をかしげた。
「ううん、なんでもない」
なんだか悪い気がしてしまう。……のは、僕が経済力のない高校生だから。僕は今まで支払いなんて一度もしたことないし。いつも先生のおごりだ。
「史也君。遠慮しないでいっぱい食べて」
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