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部屋に入ってまず目に飛び込んできたのは横浜の夜景だ。部屋は高層階だから、夜景を見下ろせる。ビルが立ち並ぶ港町の明かりは、思わず見とれるほど美しい。
僕は窓辺に駆け寄った。
「先生も来てよ」
荷物をクローゼットにしまっている(いつ車に積んだのか、僕の泊まり用の荷物もしまわれている)先生に呼びかけた。
「どれどれ」
「きれいだよ、先生」
「ほら、このほうがきれいだ」と言って、先生は部屋の照明を落とした。
「ほんと……」
「史也」
先生は僕を羽交い絞めにするように、後ろから抱き締めてきた。
「先生……」
「早くこうして史也を抱きたかった」
耳元で熱く囁く。ゾクゾクしたものが僕の背をはしる。
「僕も……」
「史也」
「んっ」
先生が僕の顎をつかんで自分のほうに向かせる。キスされるんだってわかったから、僕はそっと目を瞑った。
唇が瞼に触れる。軽く押し当てるだけのやさしいキス。
いつも先生は、すぐに唇にはくれない。最後の楽しみをとっておく子供のように、髪に、頬に、鼻に……顔中にキスの雨を降らせてからやっと唇に触れてくれる。じれったく待たされている間に、僕の期待は高まって体はとろとろに蕩けてしまう。
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