『小田切の死』

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そのギャンブルに対する姿勢は苛烈を極めた。 【ゴールドラッシュ】が開催されていない時期に、ここ【漆黒館】でギャンブルをする人間はほぼ取引絡みの上役のみ。 要するに……暇と金を持て余した人間達の小洒落た暇潰しである。 総じて舘としては接待気味の勝負となるのが通例であった。 勝ち負けを幾度か繰り返し、結局最終的に少し相手を勝たせる、そんな展開が望ましいのだ。 どこにでもあるような暗黙の規約。 それを【神崎】は館側として初めてテーブルを囲んだ一戦目から 完全に廃除したのだ。 前任者である【02】こと【梶原】も常日頃勝負への潔癖さを自らへ課していたが、あまりにも勝ち過ぎる事があると、毎回では無かったがやはりわざと負ける事もあった。 だが…… 【神崎】はそうはしない。 相手が駆け引きをまるで理解しない素人であろうが、ゲーム前にきつめの酒を飲んでいようが、知略の限りを尽くし、完膚なきまで叩きのめしていた。 そこには彼なりの淡く歪んだ期待があった……。
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