『小田切の死』

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内線でのやり取りはそのまま三、四分の間続いていた。 しかし、聞いている【銀仮面】は全く動じる事無く、一言二言地下の仮面に指示を出し、溜息をつきつつ内線を切った。 受話器を置く前には、いつからかワイングラスすら片手に備わっている。 そして振り返り様に、嫌味をたっぷり効かせた溢れる笑顔を見せつつ言葉を放った。 もちろん、食事を同席する間柄になった時から、部屋内では今や【銀仮面】の顔に見慣れた仮面はすでに無い。 『聞こえたか? お前のライバル、フフ……、まぁライバルと言えるかはお前が認めて【いた】かどうかだが……。 あの【小田切】が死んだそうだ。 相部屋の男に殺されたらしい。 たしか名前は【柳】だったか……。 まぁ……、 そいつも首を吊って死んだがな』 そう言ってグラスに半分程残っていたワインを一気に飲み干す。 【銀仮面】からすると、ここで日常的に起こりうるただの小さな出来事に過ぎないのだ。 確実に忍び寄る死に対しての恐怖感は想像を絶する物があるのだろう、 そう理解している為自殺や喧嘩の延長にあたる他殺等取るに足らない。 だが、一方の【神崎】にとっては…… 少なからず 今すぐには受け入れ難い事実だった……。
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