『敗北者』

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通常、部屋から出された男は薬品を投与され、しばらくは【実験待機室】と呼ばれる部屋に放り込まれる。 そこは普段生活する陰湿な部屋と比べると明確に空気が澄みわたっており、簡素ではあるが、音楽プレイヤー、ソファー、雑誌まで置いてあった。 それには訳があり【漆黒館】側としては、新薬のデータを正確に取る為に、なるべく通常の生活をさせる必要があったのだ。 その為、体から薬の効果が適度に失われるまでは、被験者に無駄な精神的、肉体的ストレスなどかけるわけにはいかないのである。 ストレスや不衛生から来た症状なのか、薬によるものからなのかが見分けがつかなくならないように、という理由が隠されていた。 この時の薬品が、いわゆる【死】へ誘うルーレット……となる。 それは自分に試される【薬品】の種類が 【当たり】ならば、多少の違和感はあるものの、たいていは快適な部屋で一日過ごすだけになるが、 【はずれ】であれば、凄まじい吐き気や頭痛、腹痛、寒気に襲われ、さらには目眩、痙攣、気絶、 そして最悪の場合…… 苦しみ抜いた末……命を落とす……。
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