『脱出への道』

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ほのかに湧き上がる達成感を抑制しつつ【小田切】は分かる範囲の大まかな場所と、二つの条件を厳守する事を再度伝え、落ち合う時間を二時間後と決めた。 場所は【館】門前。 出来れば敷地内の駐車場辺りが望ましいのだが、微かに残る記憶では門は自動で開閉しないはずだった。 そうするとモニター監視の上での遠隔操作が一般的。だとすれば【館】側が【三宅】と不審な車を見つけてわざわざ門を開けるはずが無い。 必然的に近づけるギリギリのラインは門前までとなる。 何もかもを伝え終えた【小田切】が、電話を切ろうとした時【三宅】が一言だけを彼に残した。 『そこは危険なとこなんだろ?報酬を忘れるなよ。俺は組織よりお前を選んだんだぜ』 耳と心に響く台詞だった。 短く分かっている、とだけ伝え【小田切】は電話を切る。 ふと時計を見た。 時間は二十一時十五分。 二十三時過ぎには【三宅】はここへ到着するのだ。 (二時間で【1億】か。いい商売じゃないか。なぁ【三宅】) 心の中だけで【小田切】はそう呟いていた。
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