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一通り暴れ、慣れない着物を着ていた事での疲れが溜まったのか、眠ってしまった大姫。
次に目を覚ますと
辺りは暗くなっていた。
『……よる…?』
まだ開ききらない目を擦りながら庭に面した戸を開き、庭を歩き始めた。
『何刻くらいだろ…』
そして一本の木の下にたどり着いた。
雲一つない星空。少しだけ欠けた月に照らされた大きな桜の木。
『満開ではないが、きれいじゃのぅ…』
幼い大姫から見てもなんとも風情のある光景だった。
何となく木に近づいてみる。そして周りに誰もいない事を確認しつつ、喋りかけてみた。
『そなた、満開になったらきっと、今日姫が着ていた着物より、もしかしたら母様よりもきれいになるかもしれんのぅ!』
『そんな事はありませんよ、大姫様!』
『…へ…?』
『私めはしがない桜…、そんな事より姫様、このような晩にお一人でお散歩ですか?』
『…さ、桜が喋りおった…!!!』
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