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「ただいまぁ」
玄関に入ってまず挨拶。
「お帰り」
ヒロが出迎えてくれたら、ハグして、キス。目を見つめながら、改めて言う。
「ただいま、ヒロ」
またキスをもらう。
この一連の動作が終わって初めて、家に帰ってきたんだなと実感がわくのだ。
一人暮らしの経験もあるけど、私には向いてない。
「ちさ、すぐご飯食べるでしょ?」
「うん」
うなずいた私が着替えている間に、ヒロが手際良く料理を机の上に並べてくれる。
今日のメニューは何かなぁ。
自分が作らない日は、そんなことが細やかな楽しみ。
「有り合わせだよ」
有り合わせ?嘘ばっかり。茄子とれん根に鳥肉が挟まれた揚げ物。こんなのが有り合わせなの?
私もそうなんだ。夕ご飯、ヒロが食べるなら出来るだけ美味しく作りたい。自分用ならカップラーメンやコンビニ弁当で良くてもね。
心がこもったご飯には、心からの賛辞。これ、鉄則。
「美味しい!」
「ほんと?」
「うん、最高。茄子が甘くて、れん根の歯応えがたまりませんな。揚げ方ちょうど良いから、肉もやわらかいよ」
ふふふ。
ヒロが笑う。それが嬉しくて私の笑みも深くなる。笑顔の無限ループ。
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