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ルール、2。携帯の充電は一日に一回。
仕事の連絡と、友達との簡単な会話。それだけに使ってれば、携帯の充電が一日一回以上必要になる、なんてことは絶対ない。そんな細かいことって、そう思う?
でもジグソーパズルだって、ちょっとした違いではまったりはまらなかったり。
人生と人の勘って、そういうもの。
「ヒロ、ヨーグルト食べるよね?」
うなずきながら化粧をする彼女の隣りには、充電中の携帯電話。その隣りには、やっぱり充電中の私の携帯。
「ちさ、私、今日遅くなる」
「んー分かった。お夕飯何がいい?むしろ、食べる?」
「もちろん!でも日付変わってから帰るかも知んないからさ、先寝ててね」
ほーい。
冷めても美味しいものか。何を作ろうかな。考えながら、ヒロの分のデザート皿に、きな粉を足して行く。ヨーグルトときな粉の組み合わせなんて絶対不味いと思うんだけど、何かの雑誌で読んだんだって。美容にいいらしい。
ベランダから朝の光が差し込んで、食器の縁を撫でている。
ラジオから聞こえてくる流行の洋楽。焼けたパンのにおいと化粧品の香り。
朝だなぁ。
ぱりぱりのパンをかじりながらコーヒーを啜った。自分で煎れたコーヒーが、一番美味しいのって私だけ?
口紅を塗り残して、食卓につくヒロ。
正面の座席に新聞を広げて座ってる。
グレーのパンツスーツ、イスのわきには黒のアタッシュケース。出来る女スタイル。
「なーに笑ってるの」
「だって、ヒロかっこいい」
言ったら、照れたらしい。口許を弛めながら、彷徨う目線。
「毎日見てるでしょ」
「そうだよ、だから毎日かっこいいと思うの」
付き合ってから7年経った今でもね。
「見ないでよー」
じぃっと見ていたら怒られたけど。
「いいじゃん、かっこいいもんかっこいいもん」
口を尖らせる。机越しに、キスされた。
「ちさは可愛い」
あぁもう、机邪魔。
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