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ルール、3。携帯は必ずチェック。隠すからばれる。これ、浮気の常識。
鍵がガチャガチャ言う音に、私は読んでいた本をぱたんと閉じた。
そのままご主人様をお出迎えする犬みたいに玄関へ、たった5歩の猛ダッシュ。
「お帰りヒロっ」
飛び付いたヒロのスーツから、微かにタバコのにおい。
ふむ。減点、1。
「ちさ起きてたの?寝てていいって言ったのに……」
「心配でしょ、寝るわけないじゃん。さーて」
ヒロのアタッシュケースからささっと携帯だけつまみ出して、掛け声つきで開いた。
「携帯チェーック!」
「私にも」
笑いながら差し出された手に、自分の携帯をぽんと投げる。
よし、今日も異常なし。と思ったら、ヒロの声が上がった。
「あれっ」
ドキッ。
「あぁ、なんだ、ツタヤからのダイレクトメールかぁ」
ちょっと、ドキドキさせないで。
「偉いねちさ、今日も浮気してないね」
にこにこしながら頭をなでられた。私は口を尖らせてすねたみたいに言い返す。
「ヒロこそね!夕飯、食べる?」
「何作ってくれたの?」
「酢の物と煮物。味が染みてるよ」
仕事から帰ってきて急いで作ったから、私が食べた時には美味しくなかったけど。
「うーん……先にお風呂に入ろうかな。一緒に入る?」
そう言ってくれると思ってた。
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